Corporate Strategy/コーポレートストラテジー
Corporate Strategy
A. Introduction
コーポレートストラテジーとは
企業が複数の事業を営んでいる場合、各事業の集まりを一つのポートフォリオとして考え、そのポートフォリオのマネジメント戦略をコーポレートストラテジーという。
- Portfolio Composition: どの事業/ビジネスに進出/撤退すべきか?Horizontal or Vertical?
- Portfolio Organization: どうやって各事業間でシナジーを生み出していくか?(各事業の単純合算よりも企業価値を高めるためにはどうすべきか)どういう組織設計?
- Portfolio Change: どうやってポートフォリオ全体を拡大/縮小すべきか?オーガニック?M&A?orアライアンス?
コーポレートストラテジーの変遷
1960, 1970年代:Conglomerate premium, Diversification and portfolio planning
- ①戦後の経済成長と、②利益率よりも成長率へのフォーカスが、より企業をコングロマリットへと駆り立てた。
- BCGのGrowth-share matrix(マーケットグロースとマーケットシェアで切る、金の生る木と負け犬)をベースにして、企業は拡大すべき事業を選んでいった。
- コングロマリット化していくにあたってのチェックツールは以下の通りシンプルなので、皆が積極的にこれを使って事業進出の判断をしていきコングロマリット化が加速。
- 加えてこのツールは、①進出マーケットの魅力と②自社の当該マーケットでの競争優位性を図ることができたので、有用だった。
- このBCGのGrowth-share matrixやこのツールの弱点
1980年代:Conglomerate discount, Specialization
- 以下の3つの要因によって、今までのコングロマリット化ではなく、選択と集中が進むように。
- 特に②のエクイティガバナンスの強化に伴い、投資家自身は複数の銘柄に投資することでUnsystematic risk(firm specific risk)は分散できるので、企業そのものが複数の事業をもって個別企業リスクを分散させる必要はないという発想が普及。ただし、システマチックリスク(市場リスク)を分散できるなら企業が複数の事業を持ってもOK。
1990年代: Core competence, Synergies guiding diversification
- 全てのコングロマリット化が悪いわけではなく、related diversification(自社が競争優位性を持っているコア分野(コアコンピタンス)に近いないし当該コア分野(コアコンピタンス)をレバレッジできるビジネス)はバリューを生み出すという発想。
- Core competence 1. provides access to wide range of markets, 2. makes
important contribution toperceived value of the product, and 3. is difficult to imitate.
2000年代以降: Distributed organization, Capture benefits of ownership without the costs
- M&Aやオーガニックグロース以外の選択肢:アライアンス、アウトソーシング、ライセンシング、JVといったinter-firm relationshipが洗練された。
- どの事業/サプライチェーンのファンクションは内製化し、どの部分は外だしするかの判断が求められるように。
B. Portfolio Composition
- Three Questions when diversifying
- Attractive industry (Structural attractiveness of the industry): Is this a good business to be in? => 5 Forcesで業界の魅力チェック、特にエントリーバリアが自社にとっては低く他社にとっては高いこと
- Competitive advantage (Synergies with current business): Would we enjoy a competitive advantage?
- Cost of entry (Acquisition cost/cost of internal development): Would gains from being in the business outweigh the cost of entry?
- 既存ビジネスと関係している新規ビジネスのほうが、既存ビジネスと全く関係ないビジネスを始めるよりもパフォーマンスが良い。
- ROAとDiversificationの度合い(どれだけ手広くやるか)は、逆Uカーブとなる。つまり、Diversificationを適度にやるとROAは最大化されるが、手広くやりすぎるとROAは下がっていく。
- 適度に手広くやればそのDiversificationによるシナジーが得られるためROAが上がるが、手広く色々やりすぎると今度は事業が多すぎてマネージできなくなりマネージングコストが発生し、かつコア事業と関係の薄いビジネスが増えるのでシナジーも小さくなり、ROAが下がっていく。
- The costs of managing a diverse business increase in line with the growing complexity of the business, whereas the returns from potential synergies reduce as the firm diversifies ever further from its core business.
- ビジネスのDiversificationのみならず、GeographicのDiversificationも、ROA/収益性と逆Uカーブの関係がある。
- 多くの国でビジネスを行うことは規模の拡大につながり、規模の経済を生かしてよりR&Dに金をかけることができる。
- しかし一方で、グローバルな調整にはリスクがある(距離、文化の違い、為替リスク、政治リスク)。
- Conclusion: Diversification into “related” businesses can create value
- Why might diversification harm performance?
- ①Empire building (Agency problem):キャッシュがあれば経営陣は企業を拡大/膨張させようとするもの。データとして、コングロマリット企業はdebtが少ない(コングロマリット形成によってデフォルトリスクが下がってデットコストが低いであろうにもかかわらず)。
- ②Incentive problem:SOを与えられていたとしても、他部門の事業に影響されるため、コングロマリット企業ではインセンティブ設計として弱い。
- ③Coordination cost:Complexity of managing diverse businesses
- ④Difficulty of valuation:アナリストは各業界のスペシャリストであるため、複合企業のバリュエーションが難しく、これがコングロマリットディスカウントにつながるリスクがある。
- What are Poor reasons for Diversification?(株主目線)
- ①コングロマリット化はビジネスリスクを下げる:複数の事業を抱えることで企業全体としてのビジネスリスクは下がるかもしれないが、会社として複数の事業を抱えるのではなく、各株主が複数の銘柄を保有することでポートフォリオ全体のビジネスリスク(Unsystematic risk)を下げればよい。ただし、そのコングロマリット化がSystematic risk(株主が複数の銘柄を保有しても分散できないリスク)を下げるのであれば、当該コングロマリット化は推進すべきである。
- ②コングロマリット化は倒産リスクを下げる:銀行等の債権者には良い話だが、倒産リスクを下げることで収益性が下がるようであればアップサイドを求める株主にとっては必ずしも良い話ではない。
- ③大きい企業は小さい企業よりも良い:マネジメントは企業の拡大/膨張を求めるが株主は必ずしもそうではない(EVAやエクイティスプレッドの最大化による株主価値向上)。しかし、規模拡大によるアナリストカバレッジの獲得や追加資本獲得の容易さといった資本市場の不完全性に由来するものはポジティブ。
Mimicking PE fund strategy
- Pros
- 資本構成:多くのDebtを使うことによるタックスメリットに加え、無駄なコストを減らすプレッシャーをマネジメントにかけ、エージェンシーイシューをミニマイズできる。
- ガバナンス:株式価値向上へのフォーカス(Cash earningsやEVA)によって、株式価値を重要視した意思決定が可能に(不採算事業からの撤退、官僚的組織からの脱却)。
- マネジメント:外部から経営陣を招へいすることも可能に。
- Cons
- PEアプローチは、ターンアラウンドのシチュエーションだと特に効果的(株式価値向上とアラインの意思決定(エージェンシーイシューがない)をよりスピーディーに求められる状況)
C. Portfolio Organization
Organization design
- Three concepts
- Organizations as collection of value chains
- Components of structure: Grouping and Linking
- Grouping options
- 一つのプロダクトを作るためのバリューチェーン(仕入⇒R&D⇒製造⇒セールス)があり、そのバリューチェーンがプロダクトの数だけ増えていき、かつそれらのバリューチェーン群はGeographyの数だけ増えることになる。
- バリューチェーンを構成するファンクションをプロダクト横断的にグルーピングしたほうがいいのか(各プロダクトのR&DやSalesは一つにまとめる等、Horizontal)、それともバリューチェーンを横断する形でプロダクトや顧客属性毎にグルーピングしたほうがいいのか(一つのプロダクトのR&Dと製造、セールスを一つにまとめる、Vertical)。
- 自社のバリューチェーンの中で、どこのチームとどこのチームの間でのシナジーが最も大きいかを考え、最大のシナジーを生み出すチーム同士を一つのグループ/部署として構成するのが望ましい。よって、シナジーの源泉が時代とともに変われば当然組織設計も変えていくべき。
- 各ファンクションをグルーピング、つまり一つの部署にまとめてしまったほうが、共通のオーソリティとインセンティブ、密なコミュニケーションもつので、インテグレーションが進む。しかし一つのグループ/部署が大きくなりすぎてかつ部署の機能がより内部で異なってくるとインテグレーションは当然弱まってくる。
- ①Functional Form:同じファンクションごとにグルーピングした組織設計。つまり、各プロダクトのR&Dを一つの部署にして、巨大なR&Dチームを作るイメージ(同様に巨大なセールスチームや仕入チームができる)。プロダクト横断で組織設計する。この組織設計が最も効率的だが、一方でサイロシンドロームの弊害が懸念される。
- サイロシンドロームによる弊害とは、縦割りな組織設計であるが故に、各ファンクション間で交流や情報交換がなく、各ファンクション(各サイロ)内だけで物事が決まっていくことによる弊害。各部署間で社内競争/揉めて情報を抱え込もうとしたり、自分の部署以外の所で何が起こっているかわからず誤った意思決定したり。各部署のインセンティブが異なる場合は、全体の収益を犠牲にしてでも各チームの利益を最大化するような誤ったインセンティブを与えかねない。
- サイロシンドロームの弊害の緩和策として、 大規模な組織においては部門の境界を柔軟で流動的にしておくのが望ましい。B. 組織は報酬制度やインセンティブについて熟慮すべき(各自の所属するグループの業績だけにもとづいて報酬が決まり、しかもグループ同士が社内で競争関係になると、お金をかけてオフサイトを何回開こうが、オープンオフィスのレイアウトを採用しようが、グループ同士が協力する可能性は低い)。C. 情報の流れが重要(各部門が情報を抱え込むととてつもないリスクが蓄積される可能性がある⇒全員が寄り多くのデータを共有するようにすること)。
- ②M-Form:同じプロダクトや顧客属性ごとにグルーピングする組織設計。ファンクション横断的な組織設計。Functional Formで問題となっていたファンクション間でのコラボレーションについては優れているものの、ファンクション毎にグルーピングされていない(R&Dのチームがプロダクトごとにある)ことから、各部署で重複が発生するダウンサイドがある。
- Organizational Design Archetypes
- Pure forms:上述のファンクション毎もしくはプロダクト毎に横ないし縦の関係しかない組織設計を指す。
- Matrix forms:横と縦の関係が複数ある組織設計。
- Hybrid forms:グルーピングの関係がバリューチェーンによって、縦だったり横だったりと変わりうる組織設計。
- No structure is perfect
- Informal organization:Informal organization adapts with delays to changes in
formal organization. フォーマルな形だけではなく、インフォーマルな要素(カルチャー、個々の社内ネットワーク)をレバレッジすることも肝要。
D. Portfolio Change
Inorganic growth
- Organic or Inorganic?
- 基本的に、自社に新規ビジネス/事業の構築に役立つ/活用できるアセットがない限り、自力でのオーガニックな新規ビジネス立ち上げよりも、インオーガニックなM&Aやアライアンスでの新規ビジネス進出のほうが望ましい。
- Equity or Non-equity?
- The David and Goliath Model for acquisitions
- 小さい企業のほうがトライアンドエラーを繰り返せたりより柔軟な組織のため、リスクの高い新しいビジネスを立ち上げるのにアドバンテージがある(ゼロから1を作り出す)。一方で、大企業は小さなビジネスのスケールアップや組織化にアドバンテージがある(1を100に)。
- よって大企業としては、数多くある小さい企業で事業をゼロから1へとうまく成功させている中小企業の勝ち組を一つ選んで買収し、大企業のアドバンテージを生かしたスケールアップや組織化を提供してトップラインシナジーを生み出していく買収戦略が考えられる(ただ中小企業のテクノロジーを買うわけではない、シナジーを生み出す)。これをダビデとゴリアテの買収戦略という。
- 買収後のIntegrationをどの程度の度合いでやるかは、ターゲット企業次第でケースバイケース。シナジー創出にあたって、どこまで買収者が買収先に関与するかはトレードオフの関係(コラボレーションしようと介入しすぎると今度は買収先のモチベーションを下げることに)にあるので、買収先に応じて最適な関与度合いを見極めることが重要。
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