書籍1(ワークシフト)
WORK SHIFT
自身の今後の生活を考える上で、今後の世界の変化/未来を想像して、自身の幸せ(所得の最大化とは限らず)を理解し、自身の望むキャリアがいったい何なのかを整理したいと思い、このワークシフトという本を買ってみました。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: ハードカバー
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読んでみて、総じて自身がもともと持っていた考えと近い主張が展開されており、違和感なく読むことができました。特に、「ゼネラリストではなくスペシャリストへ」というところです。具体的には、一つの企業の中でしか通用しない技能ではなく、自身が興味を抱ける分野で高度な専門技能を磨き、自身を差別化する(自分ブランドを築く)、という点。
だいぶ昔の話ですが、大学卒業時に自身がキャリアで重要視していたこととしては、業務への興味以外に、自身が務める会社に依存しないプロフェッショナル/マーケットから評価される一人前のプレーヤーになることを目指していたのだったと、改めて再確認できました。
少し話は違いますが、よく「自分は細かいところを突き詰めていくタイプではないので、スペシャリストではなく、そういったプロフェッショナル/スペシャリストをマネジメントする(モチベートしてチームのバリューを最大化する)ような人材になりたい」といった話をされる方もいるのですが、個人的には、そういったタイプの上席/マネージャーを部下/同僚として尊敬できるかと言ったら微妙なところだなと思っていました。
チームメンバーをモチベートするとか限られた人的リソースを上手く使いこなすといったコミュニケーション能力は重要だとは思う一方、業種にもよると思いますが、ある一分野のスペシャリストにもなりきれない人間(一分野の追及をあきらめた人間)がそんなことをできるのか、またその分野のスペシャリストだからこそチームの問題点もわかる気がしますし、何よりあまり詳しくない人から指示されることこそモチベーションの低下を招く気がします(超大規模なチームを率いる等であればまた話が変わってくるのかもしれませんが)。
また合わせて、今後の世界の五大変化(テクノロジーの進化、グローバル化の進展(トランプがUSファーストとは言っているものの太宗の流れは変わらずか)、人口構成の変化と長寿化、社会の変化、エネルギー・環境問題の深刻化)について、改めて整理できた気がします。
WORK SHIFT
未来に押しつぶされない職業生活を気付くためにシフトすべき3つの従来の固定観念・常識
1. First shift: ジェネラリストではなく複数分野におけるスペシャリストへ
A. Summary
- ジェネラリスト的な技能を尊ぶ常識を問い直す
- 広く浅い知識しかもたないジェネラリストから、いくつかの分野について高度な専門技能を備えたスペシャリストへのシフト
- 一つの企業の中でしか通用しない技能ではない
- 高度な専門技能を磨く(自分が興味を抱ける分野で)
- 自分を差別化するために自分ブランドを築くこと
専門技能の連続的習得
その後も必要に応じて、ほかの分野の専門知識と技能の習得を続ける
セルフマーケティング
自分の能力を取引先等に納得させる材料を確立する
キャリア選択の流れ
① ある技能がほかの技能より高い価値を持つのはどういう場合か
- その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること
- その技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っていること
- その技能が他の人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくいこと
- 需要が供給よりも多い
- 新規参入+模倣・代替が難しい
- マクロでのプラス(政府とかテクノロジーとか)
- 価格交渉力(バーゲニングパワー)
② 未来の世界で具体的にどういう技能が価値を持つか予測する
③ 未来に価値を持ちそうな技能を念頭に置きつつ、自分の好きなことを職業に選ぶ
④ その分野で専門技能に徹底的に磨きをかける
⑤ ある分野に習熟した後も、移行と脱皮を繰り返して他の分野に転身する覚悟を持ち続ける
B. Note
- 健康寿命の増加 ➡ 興奮と刺激を味わえる仕事を見つける ➡ 自分で新しいビジネスを始めるチャンスの拡大(大企業への長期奉仕ではなく) ➡ 上達できそうな専門技能や能力を見つける必要性(大企業において使える専門技能や能力ではなく、個人単位で発揮できるような能力だとベターか)
- イノベーションは多様性のある環境から生まれやすい ➡ 違う国籍の人と働くことへの慣れ(コツをつかむ)
- インターネットの発達(世界50億人がつながる世界) ➡ 浅い情報の取得が容易に(Wikipedia、各種文献) ➡ 広く浅くの知識のバリューの低下 ➡ ジェネラリストではなくスペシャリストのニーズ
- グローバル化の進展+テクノロジーの進化 ➡ 貴方と同種の知識や技能を持っていて貴方より早く安く上手く同種の仕事を行える人が世界中に何千・百万人 ➡ その他大勢からの自らの差別化 ➡ そのために時間と労力を費やし専門分野の知識と技能を高める必要あり(熟練の技を磨き上げる必要あり、複数の分野の掛け算で差別化)
- 職業人生の長期化 ➡ 自身の専門分野が時代遅れ・価値がなくなった場合 ➡ 関連分野への移動や脱皮、あるいは別の分野への飛び移りが必要 ➡ いくつかの専門技能を連続的に習得していかねばならない
- ジェネラリストの利点は浅く広い知識や技能 ➡ 身に着けた技能のうちいくつかが価値を失ってもダメージは限られていた ➡ 未来の世界では浅い知識や技能では用をなさなくなる ➡ 未来を形作る要因を土台に、どの分野で専門技能を磨くかを選択しなくてはならない ➡ どういう技能が高い価値を持つかを予測しどうすればそれを習得できるかを理解する必要あり
- ジェネラリストが管理職 ➡ 社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに会社が終身雇用を保証するという契約 ➡ 職業人生の大半を一つの会社もしくは業界で働き続け、いわゆる会社人間 ➡ おかげで自身の会社を熟知しいつでもどこでも会社の代弁者になれた ➡ 会社の上層部と接点を持つことにより、自社の文化や精神を理解し、会社のトップに代わって様々な決断を下せた ➡ 管理職たちは会社の外で役にたつ高度な専門技能や知識を持っていない場合もあった(フォード管理職に必要とされる知識や人脈はフォード特有のもの) ➡ しかし会社が生涯にわたって働く場を保証してくれたのでそれでも支障はなかった
- 問題は旧来の終身雇用の契約が崩れ始めた ➡ ジェネラリストがキャリアの途中で労働市場に放り出されるケースが増えている+定年以降にできることがない ➡ 一社限定の知識や人脈と広く浅い技能を持っていても大した役に立たない
- インターネットから浅く広い知識は収集可能 ➡ 競い相手は同僚やインド企業だけでなく、WikipediaやGoogle analyticsなどのテクノロジーの数々 ➡ 長い時間をかけて築いた人脈も昔ほどの価値を持たない(リンクトインやfacebookなどのSNSを利用すれば誰でも世界的に人的ネットワークを広げられる時代)
- 複数の専門分野の技能と知識を深める+ほかの専門家の高度な技能を生かすために人的ネットワークを構築すること(人的ネットワークの構築についてはセカンドシフト)
C. M&Aアドバイザリー業務に関して
- 昔は情報の非対称性にバリューあり、しかしM&Aナレッジのコモディティ化、社内M&A部隊の内製
- 弁護士や会計士に比べて高いフィーを正当化する理由は、ファイナンス/為替等の複合化以外だとネットワーキング力(相手企業、キーマンとのつなぎ)
- 正当化できるのはネットワーキング(特に海外のシニアへのコネクション)
- M&Aアドバイザリーだけではなく、ファイナンス+為替+エクイティデリバといった証券会社プラットフォームの利用(ブティックにはできないこと)➡なぜブティックが台頭?中小へのフォーカス?メジャープレーヤーの移籍?
- 会社の看板・ネットワークがなくなった時の個人のバリューは?
- リピートオーダーの頻度(M&Aの頻度はそこまで多くない)
- PMIへのノータッチ(M&Aで成功のカギともいわれる一番の重要箇所なのに)
- 単なる買収価格をジャスティファイするだけの役割、算定機関としての価値
- 他社との差別化の難しさ
- 主幹事であることの政治的弊害(安くM&A、高いファイナンス、セルサイドにつけない)
- 毎年の案件獲得(ストックではなくフロービジネスのため)
- ピッチにおけるカバレッジとエグゼキューションの役割/責任の不明瞭
- ランクバリューへのこだわり
- フィー体系とクライアント株価とのインセンティブなし
- 残業規制、若手の能力・モチベ低下、中堅への負担のしわ寄せ
- 働き方(長時間労働)、家族との時間を犠牲
- アップサイドの限定による優秀層の低下(新卒/中途人気の低下)
- インサイダー取引への規制、株式投資機会の喪失
- M&A押し売りといった揶揄
- 達成可能性の極めて低い予算設定+政治的案件の確保(安いフィーで)
- RORAベースではなく絶対値での収益貢献
- 資本や人も提供できず知恵のみ
- 辞めることの裏切り感の醸成
- 採用への力の注ぎ具合
- 曖昧なボーナス評価
- 尊敬できるプレーヤーの少なさ(辞めていく)
2. Second shift: 3種類の人的ネットワークの構築
- キャリアを成功させる土台が、個人主義と競争原理であるという常識を問い直す
- 孤独に競い合う生き方から、他の人と関わり協力し合う生き方へのシフト
人間関係資本(人的ネットワークの強さと幅広さ)の拡充を図る
孤独に競争するのではなく、他の人たちと繋がりあってイノベーションを成し遂げることを目指す姿勢に転換する必要あり
これらネットワークの意識的な構築の必要性
① 難しい課題に取り組む上で頼りになる少人数の盟友グループ
② イノベーションの源泉となるバラエティにとんだ大勢の知り合いのネットワーク
③ ストレスを和らげるための打算のない友人関係
3. Third shift: 所得と消費を中核とする働き方からの卒業
- どういう職業人生が幸せかという常識を問い直す
- 大量消費を志向するライフスタイルから、意義と経験を重んじるバランスのとれたライフスタイルへのシフト
情緒的資本(自分自身への理解、自身の行う選択について深く考える力、勇気ある行動をとるために欠かせない強靭な精神をはぐくむ能力)の拡充を図る
家庭や趣味、社会貢献などの面で充実した創造的経験をすることを重んじる生き方への転換(大量消費主義ではなく)
代償(プロコン)を認識したうえで、人生のバランスを重んじる姿勢に転換することが幸せか
今後の5大変化
➡ 働き方の常識が覆る ➡ 自身の未来ストーリーを描き出す(捨てる・肉付け・足りないもの・再分類・図柄の見出し)
- テクノロジーの進化
- テクノロジーの飛躍的発展(PC/携帯端末コストの低減により)
- 世界50億人がインターネットで結ばれる(都市部だけでなく農村部でも)
- どこでもクラウドを利用できる(最先端のテクノロジーが世界の隅々へ)
- 生産性が向上し続ける(コストがほぼかからないコミュニケーション技術)
- ソーシャルな参加が活発に(群衆の知恵)
- 知識のデジタル化(正規の学校教育を受けられない人にはとてもプラス)
- メガ企業とミニ起業家が台頭(グローバルでやりやすく+テクノロジーで簡単に)
- バーチャル空間で働くことが当たり前に(世界中の人達と連絡を取り合いながら)
- 人工知能アシスタントの普及(膨大な情報の整理、課題の優先順位判断)
- テクノロジーが人間の労働者にとって代わる(ロボットによる生産性向上)
- グローバル化の進展
- 人口構成の変化と長寿化
- Y世代の影響力の拡大(ワークライフバランス、業務の面白さ➡仕事・組織変革へ)
- 健康寿命の伸長(60歳を過ぎても働き続ける人が大幅に増える)
- ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える(高齢者の働き口の確保が困難)
- 国境を越えた移住が活発に(ケアや支援のために途上国から先進国へ)
- 社会の変化
- 家族の在り方の変化(家族の規模縮小、離婚・再婚+養子縁組といった多様化)
- 自身の見つめ直し(家族・職場の人の多様化➡自分にとって何が大切か)
- 女性の力が強くなる(マネジメント層の変化、家庭での男女関係の変化)
- バランス重視の生き方を選ぶ男が増える(自分の父親を反面教師に、家族重視へ)
- 大企業や政府に対する不信感増
- 幸福感の低減(逓減)
- 余暇時間の増加(作業の効率化➡テレビに充てられている)
- エネルギー・環境問題の深刻化
- エネルギー価格の上昇(資源枯渇+中国/インドでの需要増➡人/物の移動を減らす)
- 自然災害による住居×(地球温暖化➡海水面の上昇、熱波・干ばつ)
- 持続可能性を重んじる文化の醸成(エネルギー効率、贅沢な消費への歯止め)